2006年09月06日
忘れん坊将軍が行く!
雨の合間に久しぶりに若いコーチ相手に思い切り打ちまくったら、そのあと午後はぐったりして寝てしまいました。なんとも情け無いですが、どうしようもないですね。いままであまり考えなかったことだけど、「年は取りたくないね」という気持ちです。
さて、そんな僕なんかまだまだハナタレ小僧だという気持ちにさせてくれる八代将軍吉宗と同じ名を持つ、Hさんの話しです。体験レッスンで1時間以上も一生懸命に相手した僕の顔を、3日で忘れてしまうHさんでしたがその後も眼が点になるような出来事の連続です。
普段から僕はレッスン中の説明は出来るだけ少なくして、必要最低限のことしか言わずに少しでも多くのボールを打ってもらう方針でやっています。でもHさんのように初めての人がいるときにはいつもよりも少し時間をかけてします。
それでHさんの最初のフォアハンドの練習でコンタクトポイントにラケットを構えてもらってただ当てるだけというのをやりました。でもHさんはほんとに簡単なボールなのに2バウンドでしかラケットに当てられません。
Hさんは僕が「行きますよ」と声をかけても眼はうつろに前方のあらぬ方を見ているんです。そしてボールを投げるとそのまま前を向いたままでラケットを少し動かしてしまうので当たらないんです。で、あわてて後ろに下がりながら2バウンドしたボールをなんとか当てます。
なんで最初から良くボールを見て打たないのかと思うのですが、何度そう言っても構えた直後しばらく眼は虚空を見つめたままです。試しに投げるタイミングを遅らせてみました。
行きますよと声をかけてボールを投げるふりをして少し待ちます、すると何秒かしてHさんは自分のラケットのあたりに視線を移しました。「今だ」と思って僕がそのラケットを狙ってボールを投げると見事に1バウンドできちんと当てました
。
僕は思わず「やった!Hさん上手く当たりましたね」と言うと、Hさんは破顔一笑と言う感じの満面の笑みでした。それをみたときに僕は「この人のレッスンは大変だけど、なんとかゲームができるようになるまで頑張ろう」と決意しました
。
以前は、ほんのまだ4歳くらいの子供達を教えることの大変だけどやりがいのあるレッスンに情熱を燃やしていました。いまはそういうキッズのレッスンはもっと若いコーチが担当していて僕は代わりでも頼まれないとやる機会がありません。
Hさんが現れて、僕はまた新たなテニスコーチとしてのやりがいを感じています。これから高齢社会に突入していくなかでこういう方々のレッスンをすることが増えていくと思います。そのために少しでもそういう中高年者の方に効果的で無理のないレッスンを模索していくつもりです。
しかし、2度目のレッスンで約90分間たっぷりとおつきあいいただいたHさんでしたが、帰り際に「先生はなんておっしゃるんですか?」とまた名前を聞かれたときには思わずその場でへたり込みそうになりました
。
だってそれまでにもう5~6回は聞かれていましたし、その帰り際の少し前に尋ねられたのは、つい15分前くらいでしたから
。
でも、負けないぞ、Hさんもアルツハイマーなんかテニスして吹き飛ばしてもらいたいです。頑張れ、忘れん坊将軍!
さて、そんな僕なんかまだまだハナタレ小僧だという気持ちにさせてくれる八代将軍吉宗と同じ名を持つ、Hさんの話しです。体験レッスンで1時間以上も一生懸命に相手した僕の顔を、3日で忘れてしまうHさんでしたがその後も眼が点になるような出来事の連続です。
普段から僕はレッスン中の説明は出来るだけ少なくして、必要最低限のことしか言わずに少しでも多くのボールを打ってもらう方針でやっています。でもHさんのように初めての人がいるときにはいつもよりも少し時間をかけてします。
それでHさんの最初のフォアハンドの練習でコンタクトポイントにラケットを構えてもらってただ当てるだけというのをやりました。でもHさんはほんとに簡単なボールなのに2バウンドでしかラケットに当てられません。
Hさんは僕が「行きますよ」と声をかけても眼はうつろに前方のあらぬ方を見ているんです。そしてボールを投げるとそのまま前を向いたままでラケットを少し動かしてしまうので当たらないんです。で、あわてて後ろに下がりながら2バウンドしたボールをなんとか当てます。
なんで最初から良くボールを見て打たないのかと思うのですが、何度そう言っても構えた直後しばらく眼は虚空を見つめたままです。試しに投げるタイミングを遅らせてみました。
行きますよと声をかけてボールを投げるふりをして少し待ちます、すると何秒かしてHさんは自分のラケットのあたりに視線を移しました。「今だ」と思って僕がそのラケットを狙ってボールを投げると見事に1バウンドできちんと当てました

僕は思わず「やった!Hさん上手く当たりましたね」と言うと、Hさんは破顔一笑と言う感じの満面の笑みでした。それをみたときに僕は「この人のレッスンは大変だけど、なんとかゲームができるようになるまで頑張ろう」と決意しました

以前は、ほんのまだ4歳くらいの子供達を教えることの大変だけどやりがいのあるレッスンに情熱を燃やしていました。いまはそういうキッズのレッスンはもっと若いコーチが担当していて僕は代わりでも頼まれないとやる機会がありません。
Hさんが現れて、僕はまた新たなテニスコーチとしてのやりがいを感じています。これから高齢社会に突入していくなかでこういう方々のレッスンをすることが増えていくと思います。そのために少しでもそういう中高年者の方に効果的で無理のないレッスンを模索していくつもりです。
しかし、2度目のレッスンで約90分間たっぷりとおつきあいいただいたHさんでしたが、帰り際に「先生はなんておっしゃるんですか?」とまた名前を聞かれたときには思わずその場でへたり込みそうになりました

だってそれまでにもう5~6回は聞かれていましたし、その帰り際の少し前に尋ねられたのは、つい15分前くらいでしたから

でも、負けないぞ、Hさんもアルツハイマーなんかテニスして吹き飛ばしてもらいたいです。頑張れ、忘れん坊将軍!
2006年09月06日
忘れん坊将軍
来るべき高齢化社会を反映して、かつてはとても珍しかった70歳代以上の初心者の入会が少しずつ増えています。
そう言う方の場合、まったくテニスの経験がないこともさることながら、スポーツの経験そのものがなかったり、いわゆる習い事というものがまったく初めてだったりします。
今日は、そういうトリプル初心者でおまけに軽いアルツハイマー症気味のHさんを中心にその他にもいらっしゃるご年配グループの大変だけど、笑ってしまうエピソードのいくつかをお届けします。
平日の午前クラスで二つめのクラスには最近、年配の方が増えていてHさんも今年で76歳になる男性で半年くらい前に入会しました。お名前がH○吉宗という方で、たぶん徳川八代将軍から取ったのだと思います。
入会にあたり僕がお試しコースというのでレベルチェックを最初にしたときのことです。自己申告でHさんは「試合にでたことがある」という欄にチェックがありました。だから僕は「ああ、わりと打てるのだろうな」と思い、準備体操のあとにその旨を話しました。以下はそのやりとりです。
僕「こんにちは、試合にお出になっていらっしゃるんですね」Hさん「えっ、試合ってなんの試合?」僕「・・・、テ、テニスの試合ですけど
」Hさん「そんなもの出たことありゃせんよ!私はテニスなんかしたことないからね」僕「
それじゃー、ここに印つけたのはお間違えになったんですね?」Hさん「イヤ、試合には出たことあるよ、碁とか将棋とかは得意だから」僕「・・・、あのこれはテニスについてのことなので、碁とか将棋じゃないんですけど」
Hさん「あー、テニスのことなのか、そりゃ失礼しましたね」
そんな感じで聞いていくと結局はHさんは「まったくテニスの経験などない」と胸を張って断言するのでした。それでしかたなく急遽、初心者レッスンとなってしまいました。
まずフォアハンドの握り方から説明したんでですが、ラケットの打球面に利き腕の手のひらをあわせてと言うやり方です。それを説明するとそのときには一応、Hさんもきちんと握れていたのでそのグリップでボールをついてもらうことにしました。
僕がボールつきを見せて「ゆっくりとこうしてついてみてください」と言って促しました。するとHさんはまず初めの段階でラケットの真ん中にボールが当たりません。だらか2打めを打とうとしてもボールはあらぬ方向にいくか、弾みが弱すぎてダメです。なんどかやってみてダメになると突然にHさんはベンチに向かって歩き出し、そして座り込みました。
僕「Hさん、どうしたんですか?」Hさん「えっ、ああ疲れたので休んでるんですわ」僕「でもまだ始めたばかりですよ、これくらいで疲れちゃったらテニスできませんよ」Hさん「いやいや、もう年だからね、先生、あなたは何歳ですか?」僕「今年で4○歳ですけど」Hさん「えー、ほんとですか、もっと若いと思うたよ、20歳くらいに見えなさるね」僕「えー、そうですかそりゃちょっと嬉しいですね」Hさんマジ顔で「冗談ですよ、そないに喜ばれたら困るがね」僕「くっ・・・」と言って顔を引きつらせて絶句!
そんなこんなで結局そのときはボールを2回つくのに15分くらいかかって、手出しのボールは何度やっても2バウンドめにしか打てなくてもう時間切れ。
そしてそのときはまだどのクラスに入るか未定だったので僕は「あーあ、この人を担当するコーチは大変だな」と他人ごとのように思いました。でもその3日あとから僕のクラスに入ることになったのでした。そしてその入会初日のレッスンにいらしたHさんに僕は「おはようございますHさん、どうぞよろしくお願いします」と挨拶しました。すると僕の顔を3日ぶりで見たHさんはこう挨拶を返して来ました。
「どうも初めまして、年寄りなんでお手柔らかにお願いします 」
それからのことはもうどれほど苦労があったか、涙なくしては書けません
。それは冗談ですが、でも笑いすぎて涙が出てくることは何度がありました。それはまた次の機会に書きます。
そう言う方の場合、まったくテニスの経験がないこともさることながら、スポーツの経験そのものがなかったり、いわゆる習い事というものがまったく初めてだったりします。
今日は、そういうトリプル初心者でおまけに軽いアルツハイマー症気味のHさんを中心にその他にもいらっしゃるご年配グループの大変だけど、笑ってしまうエピソードのいくつかをお届けします。
平日の午前クラスで二つめのクラスには最近、年配の方が増えていてHさんも今年で76歳になる男性で半年くらい前に入会しました。お名前がH○吉宗という方で、たぶん徳川八代将軍から取ったのだと思います。
入会にあたり僕がお試しコースというのでレベルチェックを最初にしたときのことです。自己申告でHさんは「試合にでたことがある」という欄にチェックがありました。だから僕は「ああ、わりと打てるのだろうな」と思い、準備体操のあとにその旨を話しました。以下はそのやりとりです。
僕「こんにちは、試合にお出になっていらっしゃるんですね」Hさん「えっ、試合ってなんの試合?」僕「・・・、テ、テニスの試合ですけど


Hさん「あー、テニスのことなのか、そりゃ失礼しましたね」
そんな感じで聞いていくと結局はHさんは「まったくテニスの経験などない」と胸を張って断言するのでした。それでしかたなく急遽、初心者レッスンとなってしまいました。
まずフォアハンドの握り方から説明したんでですが、ラケットの打球面に利き腕の手のひらをあわせてと言うやり方です。それを説明するとそのときには一応、Hさんもきちんと握れていたのでそのグリップでボールをついてもらうことにしました。
僕がボールつきを見せて「ゆっくりとこうしてついてみてください」と言って促しました。するとHさんはまず初めの段階でラケットの真ん中にボールが当たりません。だらか2打めを打とうとしてもボールはあらぬ方向にいくか、弾みが弱すぎてダメです。なんどかやってみてダメになると突然にHさんはベンチに向かって歩き出し、そして座り込みました。
僕「Hさん、どうしたんですか?」Hさん「えっ、ああ疲れたので休んでるんですわ」僕「でもまだ始めたばかりですよ、これくらいで疲れちゃったらテニスできませんよ」Hさん「いやいや、もう年だからね、先生、あなたは何歳ですか?」僕「今年で4○歳ですけど」Hさん「えー、ほんとですか、もっと若いと思うたよ、20歳くらいに見えなさるね」僕「えー、そうですかそりゃちょっと嬉しいですね」Hさんマジ顔で「冗談ですよ、そないに喜ばれたら困るがね」僕「くっ・・・」と言って顔を引きつらせて絶句!

そんなこんなで結局そのときはボールを2回つくのに15分くらいかかって、手出しのボールは何度やっても2バウンドめにしか打てなくてもう時間切れ。
そしてそのときはまだどのクラスに入るか未定だったので僕は「あーあ、この人を担当するコーチは大変だな」と他人ごとのように思いました。でもその3日あとから僕のクラスに入ることになったのでした。そしてその入会初日のレッスンにいらしたHさんに僕は「おはようございますHさん、どうぞよろしくお願いします」と挨拶しました。すると僕の顔を3日ぶりで見たHさんはこう挨拶を返して来ました。
「どうも初めまして、年寄りなんでお手柔らかにお願いします 」
それからのことはもうどれほど苦労があったか、涙なくしては書けません
